診療のご案内

北海道大学病院 乳腺外科は、「乳房の病気」 特に、「乳がん」 を診療の中心としています。
乳がんの診療においては、診断から治療まで一貫して行い、生活の質(QOL)と心のケアを第一に考慮した診療を心がけています。診療を担当する医師はすべて乳腺専門医であり、腫瘍センター、外来治療センター、放射線部、病理部などとチーム医療を行うことにより、手術療法・薬物療法・放射線療法全般にわたり、乳がん診療のガイドラインに沿った世界標準治療を実践しています。

北海道大学病院の受診については、下記をご覧ください。
http://www.huhp.hokudai.ac.jp/hotnews/category/2.html

<乳癌の診断と治療について>

目次

  1. はじめに
    北海道大学病院における乳がんの診療実績
    地域がん診療連携拠点病院として
  2. 乳がんとは
  3. 乳がんの診断
    (1) 視触診
    (2) マンモグラフィー
    (3) 乳房エコー(乳房超音波)検査
    (4) 乳房MRI
    (5) 針生検(エコー下マンモトーム生検)
    (6) ステレオガイド下マンモトーム生検
  4. 乳がんの治療
    (1) 手術療法
     1) 乳房温存手術と乳房切除術
     2) センチネルリンパ節生検と腋窩リンパ節郭清術
     3) 乳房再建術
    (2) 薬物療法
     1) 内分泌療法(ホルモン療法)
     2) 化学療法
     3) HER2に対する分子標的療法
     外来治療センターについて
    (3) 放射線療法

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1.はじめに

北海道大学病院における乳がんの診療実績

北海道大学病院における過去4年間の乳がんの初回治療患者数は平均110名/年で、乳がん手術患者数は平均約100名/年です。当院では、日本乳癌学会が認定する乳腺専門医が乳がんの診断と治療を担当しています。腫瘍センター、外来治療センター、放射線部、病理部などがチームとなって乳がん患者さんをサポートする体制が確立しています。

地域がん診療連携拠点病院として

北海道大学病院は、「地域がん診療連携拠点病院」として診療体制、相談支援体制、疫学的調査・情報提供体制が整備されています。

「腫瘍センター」には、「緩和ケアチーム」や「がん相談支援室」があり、患者さんのこころやからだのサポートのみならず、がんの診療(診断や治療)の相談、ご家族のことや費用についてなど様々な相談に対して専門研修を受けた支援相談員が対応しています。
ベテランの乳腺専門医による乳がんの「セカンドオピニオン外来」も行っています。

北海道大学病院 腫瘍センター については下記をご覧ください。
http://www.huhp.hokudai.ac.jp/cancer/index.html

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2.乳がんとは

乳房には「乳腺」組織という乳汁をつくる組織があります。乳腺組織には、良性または悪性の腫瘍(しゅよう)が発生することがあります。乳腺から発生する良性腫瘍で最も多い疾患は「乳腺線維腺腫」ですが、この病気が命に関わることはありません。乳腺に発生する悪性腫瘍のほとんどが「乳がん」です。

乳がんは、日本人女性において1990年代後半から「がん」の罹患率の第一位となり、増加の一途をたどっています。この20年間で25歳以降のいずれの年齢層においても約2倍増加し、現在、1年間に約5万人の新たな乳がん患者さんが見つかっています。

一方、乳がんの治療法は著しく進歩しています。手術はどんどん縮小され、また、ひとりひとりの患者さんの乳がんの性質に合った適切な薬物療法(くすりの治療)を行うことにより、7割以上の方が完治(完全に治る)します。

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3.乳がんの診断

乳がんの診断方法には、視触診、マンモグラフィー、乳房エコー(乳房超音波)、乳房MRI(エムアールアイ)、針生検(マンモトーム生検)などがあります。そのうち、視触診、マンモグラフィー、乳房エコー(乳房超音波)は最も基本的な乳房の検査であり、北海道大学病院 乳腺・内分泌外科外来に受診されるほぼすべての患者さんに行っています。

(1) 視触診

乳がんの自覚症状で最も多いのが「しこり」です。乳がんの場合、しこりは堅く触れるものばかりではなく、柔らかく触れる(ように感じる)場合もあります。「しこり」としてはっきりわからなくても、乳房の一部(あるいは大部分)が硬いように感じることもあります。また、乳房の皮膚がひきつれたり、赤くなることもあります。乳頭から分泌液が出るとか、乳頭のただれ、乳頭の変形などが乳がんの最初の症状の場合もあります。乳がんの初期症状には様々な場合がありますので、乳房あるいは脇(腋窩)にこれまで気がつかなかった何らかの変化があれば専門医を受診することをお薦めします。

(2) マンモグラフィー

乳房のレントゲン検査で、乳癌検診でも行う検査です。乳房専用のレントゲン装置で撮影します。マンモグラフィーの撮影をするときは乳房を圧迫しますので、撮影時、圧迫されて痛みがある場合があります。マンモグラフィーは早期の乳がんの発見に非常に有効なため、乳房に異常のある患者さんに対して必ず行う検査のひとつです。なお、当院では女性の技師がマンモグラフィー撮影を担当しています。

(3) 乳房エコー(乳房超音波)検査

乳房にゼリー状の液を塗って行う検査で痛みはありません。エコー検査を行うことにより、乳房に「しこり」が存在するかどうかが評価できます。また、「しこり」が存在する場合、しこりがどのような形や性状をしているかを診断します。また、触らないようなとても小さなしこりを発見できることもあります。特に乳腺の厚い比較的若い女性にも有用な検査です。北海道大学病院 超音波センターでは、乳房エコーの専門研修を受けたスタッフがエコー検査を担当しています。

(4) 乳房MRI(エムアールアイ)

乳がんと診断され手術を行う場合、乳房温存手術(乳房の一部のみ切除して大部分は残す手術)が可能か、あるいは乳房切除術(乳房全部を切除する手術)が必要かは、乳房のしこりの大きさだけでは決めることはできません。しこりは小さくても、乳管の中を進展して、がんがしこりの周囲に広がっている場合があります。乳房MRIは、乳がんの広がりを精密に評価して手術方法を決めるために必須の検査です。北海道大学病院 放射線部では、乳房検査専用の「3テスラMRI」という非常に精密に乳がんの広がりを評価できるMRI装置を使って診断しています。手術の方針決定と、乳房温存手術を行う場合の切除範囲の決定に役立てています。

(5) 針生検(エコー下マンモトーム生検)

エコー検査で乳がんを疑うしこりなどがある場合、これが乳がんかどうかを調べるためにこの検査を行います。乳がんと診断されている場合でも、治療方針決定のため(術前薬物療法が必要な患者さんなど)に行うこともあります。局所麻酔をしたあと、約4mm程度の小さな傷をつけて、そこから針を入れて、しこりなどから病理組織検査に必要な組織を取ってきます。傷跡はほとんど目立ちません。

(6) ステレオガイド下マンモトーム生検

乳がん検診のマンモグラフィーなどで乳がんを疑う微細な石灰化が見つかった場合、これが乳がんかどうかを調べるためにこの検査を行います。局所麻酔をして約4mm程度の小さな傷をつけて、そこから針を入れ、コンピュータを使った特別な装置を使って石灰化を含む乳腺組織を採取し、病理検査を行います。

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4.乳がんの治療

乳がんの治療には、手術、薬物療法、放射線療法があります。手術および放射線療法は乳房そのものへの治療(局所療法といいます)であり、薬物療法(くすりの治療)は全身への治療です。ひとりひとりの患者さんの乳がんの性質や進行度(例えば、わきのリンパ節に転移があるかどうか)などを考慮して、最も適した組み合わせで治療を行います。

(1) 乳がんの手術療法

手術は乳がんに対する最も基本的な治療のひとつです。乳がんの手術は、「乳房の手術」と「腋のリンパ節(腋窩リンパ節)の手術」の組み合わせであり、それぞれの患者さんに最も適した手術方法を選択します。

1) 乳房温存手術と乳房切除術

乳房に対する手術方法には、“がん”の存在する乳房の一部だけ切除する「乳房温存手術(乳房部分切除術)」と乳房全部を切除する「乳房切除術」があります。私たちは「乳房温存手術」を乳がんに対する第一選択の術式としています。当院における最近3年の平均では、6割の患者さんが乳房温存手術を、4割が乳房切除術を受けています。「乳房切除術」は、(1)しこりが大きい場合や、(2)手術前の検査(MRIなど)でしこりは小さいにも関わらず、がんがしこりの周囲に広がっている場合(乳管内進展が広範囲の場合など)に適応となります。最近では、手術前にくすりを使ってしこりを小さくすること(術前薬物療法)により「乳房温存手術」を目指す方法を積極的に行っています。

2) センチネルリンパ節生検と腋窩リンパ節郭清術

乳がんの進行度の評価に最も重要な指標のひとつが「腋のリンパ節転移の有無」です。乳がんと診断された場合、「腋のリンパ節に転移があるかどうか」が、再発を防ぐ薬物療法の方針決定の重要な指標になります。現在、2つの方法(センチネルリンパ節生検または腋窩リンパ節郭清術)で評価しています。

3) 乳房再建

乳房を残すことができずに乳房全部を切除する手術を受けられた場合、乳房を再建することができます。また、乳房を残す手術を受けられた場合でも乳房の変形が気になる場合は、より良い形の乳房を作ることもできます。乳房再建は北海道大学病院 形成外科が専門に行っています。乳房再建についてお知りになりたい方、乳房再建を希望される方は、当院 形成外科にご紹介しております。これから乳がんの手術を受ける方も、すでに手術を受けられた方も、どのタイミングにおいても形成外科でご相談することができます。

(2) 乳がんの薬物療法(くすりの治療)

乳がんの手術を行うほとんどの患者さんに、現在、再発を防ぐための薬物療法(くすりの治療)が必要であると考えられています。手術をしても術後何年かあとに骨や肺、肝臓などに乳がんの転移が見つかってしまう場合があります(「再発」といいます)。これは、乳がんと診断され手術を受けるときに、すでに乳がんの細胞が血管のなかに入って全身に広がっており(CTなどによる画像診断では見つからない目に見えない転移で「微小転移」といいます)、徐々に増殖してしまったことを示しています。乳がんと診断されたときに、すでに全身に広がっているかもしれない「微小転移」を、手術で取り除くことはできません。現在は、乳がんが「再発」した場合は生命にかかわるとされていますが、「微小転移」の段階で薬物療法を行うことにより、「微小転移」を根絶させて乳がんを「完治」(完全に治す)させることが可能です。そのため、手術の前あるいは手術後、あるいは手術の前と後の両方に行う再発を防ぐための薬物療法は、乳癌の治療の中でも最も重要であるといえます。どのような薬物療法を行うかは、ひとりひとりの患者さんの乳がんのタイプ(性質)やがんの進行度によって異なります。どのような場合にどの薬物療法が適切かについては、エビデンスに基づいて確立された乳がん診療のガイドラインに沿った標準治療が推奨されます。

現在行われている乳がんの薬物療法には、内分泌療法(ホルモン療法)、化学療法(抗がん剤)、HER2に対する分子標的療法(ハーセプチン®、タイケルブ®)、血管新生阻害剤(アバスチン®)、骨転移に対する治療薬(ゾメタ®、ランマーク®)があります。乳がんのタイプ(性質)やがんの進行度によって、ひとりひとりの患者さんに最適な薬物療法は異なります。

1) 内分泌療法(ホルモン療法)

女性ホルモン(エストロゲン)によって増殖する乳がんがあります。日本人女性の乳がん患者さんの約8割を占めるホルモン・レセプター(受容体)陽性の乳がんがこれに該当します。ホルモン・レセプターには、エストロゲン・レセプターとプロゲステロン・レセプターがあり、手術や針生検で切除した乳がん組織を用いて判定します。一般にはどちらかが陽性の場合、ホルモン・レセプター陽性と判定します。内分泌療法(ホルモン療法)は、ホルモン・レセプター陽性と判定された乳がんの患者さんに、手術後の再発を防ぐための薬物療法として、また、再発した場合において、数多くの臨床試験の結果により最も推奨されている治療です。ホルモン・レセプター陽性と判定された乳がんの患者さんが手術後に内分泌療法を行うことにより、乳がんの再発が半分以下に抑えられることが証明されています。内分泌療法の内容は、閉経前の患者さんと閉経後の患者さんで異なります。閉経前の患者さんには、卵巣からの女性ホルモンの分泌を抑制して月経を止める注射と、タモキシフェンという薬を内服するのが標準とされています。閉経後の患者さんに対しては、アロマターゼ阻害薬が第一選択とされています。

2) 化学療法

アンスラサイクリン系薬剤(アドリアマイシン、エピルビシンなど)とタキサン系薬剤(パクリタキセル、ドセタキセル)が乳がん治療の主要薬剤です。これらの薬剤は、数多くの臨床試験により、乳がん手術後の再発を防ぐ効果があることが証明されています。どのような化学療法を施行するのが最適かは、ひとりひとりの患者さんの乳がんのタイプ(性質)とがんの進行度(再発リスク)を評価した後、どの化学療法でどのくらい再発リスクを減らせるか、さらに、どのような副作用が予想されるか、を総合的に評価して決定されます。

3) HER2に対する分子標的療法(特に、ハーセプチン®療法について)

分子標的療法のひとつで、HER2(ハーツー)陽性の乳がん細胞だけに効果を発揮する特殊な薬剤です。乳がんの約2割がHER2(ハーツー)陽性のタイプの乳がんであり、このタイプの乳がん患者さんにのみハーセプチン®による治療を行います。ハーセプチン®は、乳がん細胞だけを狙い撃ちするという点で化学療法剤とは大きく異なり、副作用が非常に少ないという特徴を有しています。また、HER2陽性の乳がんに対して再発を防ぐ効果が非常に高いことも証明されています。

外来治療センターについて

北海道大学病院には、化学療法やハーセプチン®療法などを安全に、かつ、少しでも快適に受けていただくために「外来治療センター」があります。外来治療センターに所属するがん治療の専門看護師である「がん化学療法認定看護師」やがん治療の専門薬剤師である「がん薬物療法認定薬剤師」などがチームとなって、適切な薬物療法を安全に、快適な環境で受けていただけるようにサポートしています。

北海道大学病院 外来治療センター については下記をご覧ください。
http://cancer.huhp.hokudai.ac.jp/about/chemotherapy

(3) 放射線療法

乳房温存手術を受けた患者さんは、手術後、手術を受けた乳房に放射線照射を受けることが乳がん診療ガイドラインで推奨されており、当院では乳房温存手術を受けた患者さんは、原則全員、放射線照射を受けていただいています。乳房切除術を受けた患者さんの場合は、腋窩リンパ節転移が多いときに放射線照射の適応となります。海外の臨床試験の結果から、手術をした側の胸壁などに手術後、放射線照射をすることにより再発率を低下させることが報告されています。骨転移の患者さんに対しては、骨折の予防や痛みの軽減目的に放射線照射を行うことがあります。

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