教育・研究活動

業績

日本超音波検査学会
平成25年度学術奨励賞
超音波検査による膵管癌の上腸間膜動脈周囲神経叢浸潤の診断能の検討

工藤悠輔,西田睦,佐藤恵美,井上真美子,表原里実,堀江達則,和田妙子,岩井孝仁,石坂欣也,小野寺祐也,平野聡,三橋智子,清水力
【目的】
膵管癌の手術適応において上腸間膜動脈周囲神経叢浸潤(PLsma)の正確な画像診断が重要となるため、体外式超音波(US)によるPLsma診断能を検討した。

【対象・方法】
当院にて2006年8月~2011年10月にUS、CTを施行し、外科的切除にて組織学的診断された膵管癌89例。装置は東芝AplioXG/500、探触子はPVT375BT、PVT674BT、PVT704AT。US診断は腫瘍と上腸間膜動脈(SMA)短軸像を同一断面に描出し、腫瘍からSMA周囲に連続する淡い低エコー像を認めた場合PLsma(+)、対照はダイナミックCTを用い、膵後方組織を超え、上腸間膜動脈周囲まで脂肪濃度の上昇が連続して観察されるものをPLsma(+)とした。USとCTの検査間隔は2週間以内。統計学的解析はMcNemar検定でP<0.05を有意差ありとした。

【結果】
組織学的PLsma(+)は15例。US、CTの診断率は感度53.3%、60.0%、特異度91.9%、90.5%、正診率85.4%、85.4%、陽性的中率57.1%、56.3%、陰性的中率90.7%、91.8%であった。両者の診断率に有意差はなかった。

【考察】
PLsma診断の感度は不良であった。US 偽陰性例は神経叢浸潤が軽微で明らかな低エコーとして認識されなかったことが原因と考えられた。偽陽性例は体部癌で多い傾向にあった。しかしながら内蔵脂肪の少ない1症例で、CT PLsma(+)、US PLsma(?)であり、組織学的にPLsma(?)であった。CTでは内臓脂肪の少ない症例で診断困難な場合があり、USでは対照的に鮮明な画像が得られるため、このような症例でUSは有用と考えられた。今後、USのPLsma診断感度向上には4Dプローブや造影USによる診断も期待される。

【結語】
USによる膵管癌のPLsma診断はCTとほぼ同等の感度を有する可能性が示唆された。
公益信託臨床検査医学研究振興基金
平成25年公益信託臨床検査医学研究振興基金「研究奨励金」
Virtual Touch Tissue Quantification(VTTQ)法による膵臓・腎臓腫瘤性病変の鑑別診断

工藤悠輔
【研究の背景】
  1. 膵腫瘤性病変
    超音波検査において硬度の評価方法としてエラストグラフィがある。従来は外部圧迫により組織の歪みを映像化する静的エラストグラフィが一般的だったが、深部病変の評価や定量性・再現性が問題とされていた。近年、体表よりプッシュパルスを印加し、組織内に横波(Shear wave)を発生させ、その伝搬速度を計測することにより、硬度を算出するトランジエントエラストグラフィが開発された。この技術によって硬度を定量的に評価可能となった。今回の検討で用いるシーメンス社の音響放射圧(Acoustic Radiation Force Impulse;ARFI)を用いたVirtual Touch Tissue Quantification(VTTQ)法は一定の面積(region of interest;ROI)内の硬度を算出可能な方法である。
    腫瘤性病変の鑑別には硬度の評価が重要とされている。乳癌においては硬度と腫瘍の増殖との関係が相関し、初期ステージからその硬度が増加する。このため、VTTQ法を始めとしたエラストグラフィによる乳腺腫瘤性病変の鑑別診断に関する報告は多数存在する。最近ではVTTQ法による肝腫瘤性病変の報告も見受けられる。しかし、他臓器の腫瘤性病変におけるVTTQ法による硬度測定の詳細な報告はない。
    膵臓の腫瘤性病変において、各種画像検査から得られる形態、血流動態、糖代謝、脂肪含有量などの情報で診断を行うが、日常臨床では鑑別困難な症例にしばし遭遇する。特に膵管癌と広義の腫瘤形成性膵炎の鑑別は問題となることが多く、各種画像検査による診断方法の報告がみられるが、いずれの方法においても確実な鑑別は困難である。VTTQ法により硬度を定量的に評価し、従来の画像情報に付加できれば、鑑別診断に有用である可能性がある。
    また、VTTQ法による健常人の膵実質の硬度を評価した報告は少なく、硬度の基準範囲を確立することができれば更に診断に寄与する可能性がある。
  2. 腎腫瘤性病変
    超音波検査において硬度の評価方法としてエラストグラフィがある。従来は外部圧迫により組織の歪みを映像化する静的エラストグラフィが一般的だったが、深部病変の評価や定量性・再現性が問題とされていた。近年、体表よりプッシュパルスを印加し、組織内に横波(Shear wave)を発生させ、その伝搬速度を計測することにより、硬度を算出するトランジエントエラストグラフィが開発された。この技術によって硬度を定量的に評価可能となった。今回の検討で用いるシーメンス社の音響放射圧(Acoustic Radiation Force Impulse;ARFI)を用いたVirtual Touch Tissue Quantification(VTTQ)法は一定の面積(region of interest;ROI)内の硬度を算出可能な方法である。
    腫瘤性病変の鑑別には硬度の評価が重要とされている。乳癌においては硬度と腫瘍の増殖との関係が相関し、初期ステージからその硬度が増加する。このため、VTTQ法を始めとしたエラストグラフィによる乳腺腫瘤性病変の鑑別診断に関する報告は多数存在する。最近ではVTTQ法による肝腫瘤性病変の報告も見受けられる。しかし、他臓器の腫瘤性病変におけるVTTQ法による硬度測定の詳細な報告はない。
    腎臓の腫瘤性病変において、各種画像検査から得られる形態、血流動態、糖代謝、脂肪含有量などの情報で診断を行うが、日常臨床では鑑別困難な症例にしばし遭遇する。特に腎細胞癌と腎血管筋脂肪腫の鑑別は問題となることが多く、各種画像検査による診断方法の報告がみられるが、いずれの方法においても確実な鑑別は困難である。VTTQ法により硬度を定量的に評価し、従来の画像情報に付加できれば、鑑別診断に有用である可能性がある。
    また、VTTQ法による健常人の腎実質の硬度を評価した報告は少なく、硬度の基準範囲を確立することができれば更に診断に寄与する可能性がある。
日本臨床化学会
支部優秀演題賞
M蛋白多様性解析に向けた高感度3次元電気泳動法の確立

中野恵一,田村彰吾,大塚浩平,新関紀康,重村雅彦,澁谷斉,松野一彦,清水力,小林清一,森山隆則
【背景】
M蛋白は、多発性骨髄腫を代表とする血液疾患において、血中における濃度の増加(量的異常)とともに質的異常が報告されてきた。この質的異常に関する解析法の一つとして、従来から2次元電気泳動法が用いられてきたが、共存する蛋白質による影響等の問題が指摘されてきた。2002年Vuらは、アガロース電気泳動でのMバンドを試料に等電点電気泳動/SDS-PAGEを実施し、3次元電気泳動(3-DE)法と命名した。しかしながら、既報の3-DE法の感度は満足できるものではなく、その特異性についても明確ではかった。そこで、今回我々は3-DE法の至適条件の確立とその特異性を明らかにすることを目的に検討し、新たに高感度3-DE法を確立し、M蛋白の多様性解析に取り組んだので報告する。

【対象】
多発性骨髄腫患者(IgG1-κ型4症例, IgG1-λ型3症例)より得られた血清を用いた。

【方法】
  1. 3-DE法の至適条件は、多発性骨髄腫と診断された患者より得られた血清のアガロース電気泳動を実施し、Mバンドを切り抜き、各種抽出溶液の添加または遠心分離によるM蛋白抽出率を検討した。
  2. 既報や2-DE法との比較は、既報の3-DE法及びプロテインG精製IgGを試料にした2-DE法と我々の確立した高感度3-DE法を比較検討した。
  3. M蛋白の多様性解析は、高感度3-DE法を用いて、そのスポットパターンに着目し検討した。
【結果】
  1. 3-DE法の至適条件の検討に際し、アガロースゲルからM蛋白抽出率を検討したところ、360μlの150mMNaClを用いた抽出率は90.6%で最も高値であった。
  2. 我々の確立した高感度3-DE法を既報による3-DE法と比較検討したところ、既報による方法は抽出率が有意(p<0.001)に低値であり、3-DEパターンについてもCBB染色でM蛋白スポットは極僅かに検出されるのみであった。また、2-DEパターンはポリクローナル残余γ-heavy chainの存在が明瞭に確認された一方、高感度3-DE法はM蛋白に由来するスポット群のみが認められた。
  3. 高感度3-DE法を用いたM蛋白多様性解析を実施したところ、M蛋白は1-5個のheavy chain スポット群、及び2-3個のlight chainスポット群として分離され、全7症例でheavyあるいはlight chainに等電点(pI)のheterogeneityが確認された。またIgG-κ型M蛋白1症例におけるlight chainは、pIに加え分子量にheterogeneityを示すことが確認された。
【考察】
高感度3-DE法の確立に際し、1次元目のアガロースゲルからM蛋白抽出法に関する至適化を実施した。M蛋白抽出に関して、抽出率は既報と比較し有意に高く、M蛋白スポットがCBB染色で明瞭に染色された。また、高感度3-DEパターンは、2-DEパターンにおいて認められた残余γ-heavy chainが認められなかった。これらの結果から、高感度3-DE法は、感度・特異度ともに良好でありM蛋白のプロテオーム解析に有用であると考えられた。さらに、高感度3-DEのスポットパターンは、症例間で異なり、その分子特性は極めて多様性に富むことが明らかとなった。今後、M蛋白の多様性と病態との関連に着目したM蛋白のプロテオーム解析に向けて高感度3-DE法の応用を期待したい。