教育・研究活動

業績

日本神経生理検査研究会
日本神経生理検査研究会会長賞
脊髄動静脈瘻手術における術中MEPモニタリングの有用性

山本雅史,関俊隆,笹森徹,飛騨一利,奥原浩之,村上望,田中小枝子,川口朋香,中根進児,渋谷斉,重松明男,清水力,寶金清博
脊髄動静脈瘻(spinal AVF)手術を行った46例を対象に、術中MEPモニタリングの有用性について検討した。その結果、ほぼ全例の被検筋において術中MEPが高振幅で導出可能であった。脊髄硬膜動静脈瘻(dAVF)14例では、全例が上下肢ともに術中MEPの振幅低下を認めず、さらに術後麻痺も認めなかった。dAVFにおける偽陽性率、偽陰性率はともに0%であった。一方、脊髄辺縁部動静脈瘻(perimedullary AVF)では32例中6例が振幅の低下を認め、うち3例では術後麻痺を認めた。perimedullary AVFにおける偽陽性率は9.7%、偽陰性率は0%であった。以上、spinal AVFにおける術中モニタリングは術後麻痺の危険性を予測することが可能であり、有用性が示唆された。
日本学術振興会
科学研究費助成事業 科学研究費補助金 奨励研究
質量分析装置を用いた真菌同定法の正確性、迅速性の向上を目的とした改良法の確立

福元達也
医療技術の発展に伴い、易感染性患者の増加とともに、深在性真菌症の発生率とそれによる死亡率が著しい上昇を続けている。発生率、死亡率の点で重要なのは酵母様真菌によるカンジダ症および糸状菌によるアスペルギルス症である。真菌が発育した際、この鑑別同定には酵母の場合、主に基質と酸化還元色素の発色色調の違いによって菌種を鑑別する寒天培地や、生化学的性状によって菌種を鑑別するキットなどが用いられる。しかしながら、Candida albicans とTrichosporon asahii では発色色調は似ているがT. asahii はキャンディン系抗真菌薬に対し耐性を持つなど個々の細菌により薬剤感受性が違う為、正確な同定を求められる。

一方、糸状菌同定にはスライド培養法による形態学的検査法が主に用いられるが、菌種の同定に2週間ほど要し、形態学に頼る為に細かい差異を見分ける技量と豊富な知識が必要になる。真菌の正確な菌種同定には分子生物学的検査が用いられ、迅速性に優れ有用性が高いが、実施にはサーマルサイクラー、シークエンサー等の高価で特殊な装置を必要とし、手技も煩雑である。MALDI Biotyper(Bruker Daltonics)は近年臨床応用され、普及しつつある微生物同定のための質量分析装置である。本装置は菌種の同定にわずか数分で完了するという迅速性に優れたものであるが、真菌測定時にマススペクトルが得られても菌の同定ができない事をしばしば経験し、ライブラリーは十分とは言えない。また、糸状菌同定に関しては液体培地で3日間培養後に検査するプロトコルとなっており、時間を要する。本研究ではMALDI Biotyperが自施設で菌株のマススペクトルをライブラリーに追加できる事を利用し、真菌のライブラリーを充実させMALDI Biotyperでの正確な菌種同定を図るとともに、寒天培地に発育した糸状菌のコロニーから直接MALDI Biotyperを使用し、菌種を同定する方法を確立し、正確性、簡便性、迅速性の向上を目指す。

【方法】
1.真菌のライブラリーの充実
北海道大学病院より分離された糸状菌を含む真菌臨床株のゲノムを抽出し、ITS領域を増幅しシークエンス解析により菌名を同定する。MALDI Biotyperを使用し得られたマススペクトルをライブラリーに追加する。

2.ライブラリー追加前後の比較
ルーチンでの同定菌名、MALDI Biotyperのライブラリー追加前後での同定菌名を比較する。

3.糸状菌同定方法の改良
液体培地で3日間培養後にMALDI Biotyperで同定する通常法と寒天培地に発育したコロニーを水に溶かしてMALDI Biotyperで同定する短縮法を用いて同定菌種の正確性を比較する。
一般社団法人日本臨床検査自動化学会
平成28年度優秀演題賞
血中肝線維化指数ELFスコアを用いた肝線維化の評価の試み

中野恵一,安田慶子,山下直樹,澁谷斉,加畑馨,清水力
【背景】
肝線維化の評価法は肝生検がゴールドスタンダードであるが、侵襲性が高く、危険が伴う等の問題がある。そこで血液検査や画像所見から肝線維化を評価する手法が模索されてきた。ELFスコアは、ヒアルロン酸(HA)、P3P、TIMP-1を組み合わせスコア化したもので、欧米では肝線維化の評価法の一つとされている。今回我々は、ELFスコアの性差、年齢による分布および既存の肝線維化マーカーとの関連について検討したので報告する。

【対象】
ボランティア27例、肝生検を施行した患者またはHA、P3Pを測定した患者81例

【方法】
ケミルミADVIA Centaur CP(シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社)にてHA, P3P, TIMP-1を測定し、ELFスコアを下記の式により算出し、1〜3の項目について検討した。
ELFスコア=2.494+0.846ln(HA)+0.735ln(P3P)+0.391ln(TIMP-1)

1)ボランティアを対象としてELFスコアの性差、年齢による分布
2)既存の肝線維化マーカー(Plt数, FIB-4, APRI)とELFスコアとの相関
3)肝生検26例の結果とELFスコアとの関係

【結果】
1)性差に有意差は認められなかったが、年齢>40群は、年齢<40群と比較し有意に高値であった。
2)ELFスコアはPlt数と有意な相関関係は認められなかったが、FIB-4(r=049)お
よびAPRI(r=047)と有意な相関関係が認められた。
3)犬山分類F0/1群と犬山分類F2およびF3群でELFスコアに有意差は認められなかった。

【考察】
ELFスコアは既存の肝線維化マーカーと有意な相関関係が認められたことから、国内でも肝線維化マーカーの一つとなり得る可能性が考えられた。また肝生検群において、犬山分類とELFスコアに有意な関連が認められなかったことは、症例数が少なかったことに起因すると考えられた。今後ELFスコアを用いた大規模の研究を期待したい。
日本超音波医学会第46回北海道地方会学術集会
最優秀演題賞
ドプラ法による糖尿病患者における腎静脈系の血流異常の検討

工藤悠輔,三神大世,西田睦,表原里実,岩井孝仁,高杉莉佳,岡田一範,澁谷斉,加畑馨,清水力
【背景】
ドプラ法により腎静脈や腎葉間静脈の血流速度波形を記録することができる。腎葉間静脈の最大流速と最小流速の差を最大流速で除したvenous impedanceindex(VII)が、糖尿病性腎症では低下していたとする報告が1件だけあるが、その機序や腎障害との関係はよくわかっていない。そこで、腎静脈と腎葉間静脈の流速波形と糖尿病や腎障害との関係を検討する。

【方法】
対象は、高血圧(HT)または糖尿病(DM)がある患者34例と健常(N)39例である。疾患例を、HT群15例、DM群10例およびHTとDMとの合併(HT-DM)群9例にわけた。GE社製 LOGIQ E9を用いて、経腹壁的にカラードプラガイド下でパルスドプラ法を行い、浅呼気位の息止め下で左右の腎動脈と腎葉間動脈の流速波形を記録し、各々のresistive index(RI)を求めた。また、同様の方法で、左右の腎静脈と腎葉間静脈の流速波形を記録し、各々のVIIを求めた。 検査当日の血清クレアチニン値から推定糸球体濾過量(eGFR)を算出し、腎機能の指標とした。

【結果】
HT、DMおよびHT-DMの3群ではN群より年齢が有意に高く、eGFRは有意に低かったが、疾患3群間ではこれらに有意差はなかった。左右の腎動脈と腎葉間動脈のRIにも疾患3群間に有意差を認めなかった。右の腎静脈と葉間静脈のVIIはDM群とHT-DM群でN群とHT群より有意に小であり、左の腎静脈と葉間静脈のVIIにも同様の傾向を認めた。疾患34例において、左右の腎動脈と左葉間動脈のRIはeGFRと有意の負相関(r=-0.36〜-0.56)を示したが、左右の腎静脈と葉間静脈のVIIはeGFRと有意の相関を示さなかった。

【結論】
腎動脈や腎葉間動脈のRIの増大が腎障害を反映したのに対し、腎静脈と腎葉間静脈のVIIの低下は、腎障害との関係は薄く、DMの存在自体と関係していた。腎静脈系のVIIは、糖尿病性腎症というより、DMによる腎循環動態の異常を反映する指標であると考えられた。