イ ン フ ル エ ン ザ と そ の 予 防 に つ い て
― う が い の 効 用 ―

 
 インフルエンザとは、インフルエンザウィルスの感染によって起こる病気です。
 通常のかぜと比べ、症状が重く全身症状も顕著にあらわれます。
 高齢者がかかると肺炎を併発したり持病を悪化させたりして重篤になり、最悪の場合は死にいたることもあります。
 また、幼児(特に2歳以下)の場合は、インフルエンザ脳症を合併することがあり、その場合は約3分の1が死亡するとされています。

 症状と経過ですが、インフルエンザウィルスに感染後、1−3日間の潜伏期間を経て、突然38−40度の高熱で発病します。
 それと同時に悪寒、頭痛、背中や四肢の筋肉痛、関節痛などの全身症状が現れます。
 これに続いて、鼻水、のどの痛みなどの症状が現れます。
 通常のかぜは、先に鼻水、のどの痛みが現れ、それに引き続き発熱や頭痛などの全身症状や咳、痰などの呼吸器症状が現れることが多く、経過が異なります。
 通常のかぜでも、(肺炎をともなわなくとも)39度以上の高熱が出ることはありますが、突然高熱で発症することは稀です。
 診断については、迅速診断法が普及し、多くの病院において、鼻かのどから分泌物をこすりとるだけで30分以内にインフルエンザの診断が可能になりました(北大病院でも採用)。

 治療についてですが、数年前までは、ウィルス性疾患(通常のかぜ、インフルエンザ、SARSを含む)については、ヘルペスなど一部を除いて、原因治療(ウィルスを死滅させたり増殖するのを抑制する)はありませんでしたが、現在では、インフルエンザについては3種類の薬が発売されており、いずれもインフルエンザウィルスの増殖を抑制する薬剤です。
 ただし、発症48時間以内に投与を開始しないと十分な効果は得られません。

 通常のかぜを引き起こすウィルスに対する薬はありませんし、SARSについては、現在世界中で治療薬の開発の研究が行われています。
 また、世界を騒がせている鳥型インフルエンザですが、理論的にはインフルエンザに対する薬が効くはずですが、まだ症例が少なく明確なデータはありません。
 鳥型インフルエンザについては、現在使用されているインフルエンザワクチンでは予防効果がありません。

 さて、本題のうがい(含嗽)の効果ですが、インフルエンザ、かぜ、SARS全てに共通しますが、飛沫感染(ウィルスの塊が唾液などの分泌物とともに放出され、それを吸い込むことによって感染すること)の予防にはうがいが有効です。

 吸い込まれたウィルスは鼻やのどの粘膜に吸着しそこで増殖します。
 そのため、増殖して気管の奥(または、のどから血液)へ侵入する前にウィルスを洗い流してしまうのが有効です。

 さらに、一般的に使用されているヨードを含むうがい液は、実験的にもインフルエンザ、SARSを含む多くのウィルスに対する不活化効果が証明されています。
 実際、小学校でのインフルエンザウィルスの流行に対して、ヨード製剤を用いたうがいの効果が証明されております。
 また、食塩水によるうがいと比較した場合でも、ヨード製剤のほうが優れていることがわかっています。

 うがいの実際の方法(図参照)ですが、ヨード製剤を例にとりますと、2〜4mlを約60mlの水で薄めます。
 最初の20mlで口の中を15秒殺菌します(ぶくぶく)。
 次に、20mlで咽喉の奥を15秒殺菌します(なるべく天井を見て、咽喉の奥まで液をいきわたらせる、がらがら)。これをもう一度繰り返します。


 一日の回数については、明確な基準はありませんが、インフルエンザ流行期で、特に人ごみに出かけた際や、インフルエンザにかかっている人と接触する場合は、朝、昼、晩、寝る前、接触後と1日4〜5回は行うべきでしょう。

 また、インフルエンザウィルスは乾燥した状態で活発に活動します。
 加湿器などを使って部屋の湿度を保ち、さらに室内の換気も重要です。

 すべての病気に共通ですが、体力を保っておくことが予防または症状の軽減にも必要です。
 一般的なことですが、バランスのとれた食事、十分な睡眠を心がけることが大切です。