さらなる院外処方せんの発行と薬剤業務の拡充を目指して
薬  剤  部


 本院で院外処方せんを発行してから半世紀近くになろうとしています。
 財団法人 協済会の「創立65周年のあゆみ」によりますと「昭和20年代の後半から全国国立大学附属病院では、医薬品購入費の不足に苦慮していた」とあります。
 当大学でも例外ではなく、その対策の1つとして、昭和32年1月より院外処方せんが発行されました。
 また、患者さんの利便性等から、はじめ、財団の薬局は院内に開設されていましたが、昭和57年、厚生省(現厚生労働省)薬務局長および同保険局長通達の、いわゆる「院内調剤薬局の構内開設の禁止」により、「昭和62年1月、調剤薬局を構外に移転した」と記述されております。

 このようしして、本院の院外処方せんが発行されてきたわけですが、院外処方せん発行に伴い、薬剤部の業務も平成5年には治験薬の一元管理、注射薬の1本渡し(処方せんでの払出)を開始し、業務が拡大されました。
 さらに、平成6年より入院患者さんへの服薬指導、8年より薬物血中濃度測定をはじめとして、抗がん剤、12年よりIVHのミキシング業務が開始されております。 
 しかし、院外率は平成8年の79%をピークとして、14年は61%にまで減少しました。

 こうしたなか、平成11年には抗がん剤のミキシングが全科対象とまでになり、また1本渡しも12年にはICUを除き全入院病棟に拡充されました。
 近年、高次薬物療法の進展と医薬品適正使用の要望に伴い、医師やコメディカルスタッフとの連携のもとに薬剤業務の質の向上と拡大が要求されてまいりました。

 難病に対する特殊製剤の調製、医薬品の安全性を含めた薬物動態に基づく投与設計の確立はもちろんのこと、昨今のマスコミ報道による医療事故の軽減を考える時、薬剤師による服薬指導、および抗がん剤・IVHの調製等は速やかな対応が求められる業務と思われます。

 この度、外来のフロアーの一角に、札幌薬剤師会の全面的な協力を得、院外処方せんのFAXコーナーを設置することが出来ました。



 相談員の方は午前9時〜午後4時まで、患者さんのご自宅に近い所でかかりつけ薬局を持ってもらうとの意図から、北大前の保険薬局には送付しないとの制約はあるものの、非常に好意的に対応して戴いております。

 院外処方せんを受けた患者さんは、かかりつけ薬局を持つ事により、他施設から処方されたお薬の相互チェックをされることが可能となります。さらに、患者さんへの服薬指導により、副作用等の発見に繋がるといわれております。
 また、FAXの利用については、自宅が病院から離れている患者さんにとって、事前に処方せんを送っておき、帰宅される途中にはお薬が出来ているという、有効な活用法があります。特に地方の患者さんにとっては有用な手段といえるでしょう。

 このような、院外発行のさらなる増加を図れる環境のもと、医師・看護師をはじめ、病院全職員の協力により、平成15年12月15日、院外専用FAXコーナーの稼働とともに、治験薬、院内製剤、校費等一部の保険区分を除いて、全面的に院外処方せんの発行が開始されました。
 15日以降、12月の院外率は90%近くを示しており、薬剤部においても1月13日よりIVH業務の他科への展開が始まりました。無菌室での調製ということもあり、当面は少数科でのスタートとなっておりますが近々には対象科を増やすとともに、服薬指導業務の拡大も併行して検討していきたいと思っております。
 IVHおよび、服薬指導の拡充等、薬剤業務のさらなる展開の為、ひいては患者指向の医療の充実を目指し、今後とも、ご理解とご協力をお願いする次第です。