血管造影とは

◆概要
血管造影検査(Angiography)とは、血管内にカテーテルと呼ばれる細い管を挿入します。その管より造影剤を注入しながら連続的にX線撮影を行い、目的とする血管の形状や血流状態、病変部を観察・診断する検査になります。
当院では2012年に新しくIVR-CT1台とFPD搭載型血管造影装置2台が更新されました。低被ばくかつ、高画質の画像を提供出来る様になり、今まで以上に医師の技術を発揮出来る環境になっています。
 
第三血管造影室

◆特徴
①血管造影検査は、診断と同時にIVR (Interventional Radiology)による治療も行うことができるという特徴が有ります。IVRとはX線透視や超音波やCT、血管造影などで放射線診断(画像診断)をしながら同時に治療を行うことです。
また、IVRでは血管造影手技にもとづき血管内にカテーテルを挿入して治療する血管系IVRと、血管を経由せずに皮膚から直接肝臓や腎臓などの臓器に針を刺して組織を採取したり、溜まった膿を体の外に出す非血管系IVRがあります。

②緊急対応が可能であり、全身状態の悪い患者さんにも施行が可能です。また、外科的手技に比べて低侵襲であり傷も小切開で済み、局所麻酔で行なえるので患者さんにかかる体への負担は少なくなります。

◆撮像原理
血管造影ではデジタル・サブトラクション・アンギオグラフィ法(DSA)で血管のみの画像を得ます。造影剤を入れる前の画像(マスク画像)と造影剤を入れながら連続でX線撮影を行って得た画像(ライブ画像)をコンピュータ処理(引き算=サブトラクション)して、骨や胃など血管を観察するのに障害となる物を見えない様にして、血管の画像だけを表示します。


検査の流れ

•検査・治療前には原則的に食事や水分はとらないようお願いいたします。
•医師の指示で検査前に投与する薬剤や、停止する薬剤がある場合もあります。
《入室》
 
•検査台の上に横になります。
•血圧計、心電図など検査に入るための準備をしていきます。また、必要な時はお小水用の管を挿入します。
 
  1. カテーテルを挿入する部分を消毒し、清潔(綺麗)な布を体の上にかけます。布がかかったら手を動かしたり布の上に出さないようにしてください。
  2. カテーテルを挿入する部分に局所麻酔をします。
  3. 血管に針を刺し、ガイドワイヤーとカテーテルを用いて目的の血管にアプローチしていきます。
    ※穿刺部位は検査によって異なります。
  4. 検査中は撮影を数回繰り返します。撮影部位によっては息止めが必要になるので、医師や放射線技師の合図に従って息止めを行ってください。
  5. 検査中は、体を動かさない様にしていてください。動いてしまうと体に太い管が入っているので危険です。また、医師の手技の妨げとなる場合があります。何か変わった事がありましたら、安全のため体を動かさず周りの医師や看護師に声をかける様にしてください。
  6. 検査・治療後、確認の撮影をしたら終了です。
    ※検査時間は、検査の内容や治療の内容によって変わってきます。

①ガイドワイヤー
②マイクロカテーテル
③ドレナージ用カテーテル
 
検査・治療後は血管からカテーテルを抜き穿刺部からの出血を防ぐため、数分間圧迫止血します。
※穿刺部位により止血時間は異なります。
•止血終了後、血圧や脈拍が安定したら清潔な布を剥がし消毒液等を拭き取り退室の準備をします退室の準備をします。


検査の種類


脳腫瘍や頭蓋内出血などの脳血管偏位を来す疾患や、脳動脈瘤や脳梗塞、もやもや病、脳血AVM(動静脈奇形)などの脳血管自体の疾患に対して血管の走行や形態を確認するために行う検査です。外科的手術の前後で行う事が多く、血管病変や、脳腫瘍の存在や関与血管の状態を把握します。
また、脳血管だけではなく脊髄AVM(動静脈奇形)の患者さんに対しても同様に検査・治療を行います。
外科的手術をせずに血管造影室で治療が行えるタイプの動脈瘤やAVMに対しては、血管造影室で血管内治療であるコイル塞栓術を行う場合もあります。コイル塞栓術を行う事で、開頭をせずにリアルタイムに血管を視覚化し、血流を確認しながら治療を進めます。
 




 
狭心症や心筋梗塞、心筋症、弁膜症、心不全などのほぼすべての心血管疾患に対して行う検査です。この検査では、心臓を栄養する血管(冠動脈)を造影することで狭窄度を観察し、心臓のポンプとしての働きや、弁の動きを調べます(左心カテーテル検査)。また、心不全等に対する検査として先端にバルーンのついた特殊なカテーテルを用いて心臓内の各部位の圧力や心拍出量の測定も行います(右心カテーテル検査)。 造影検査で冠動脈に狭窄が見つかれば経皮的冠動脈形成術(PCI)という治療を行います。PCIでは、造影検査をしながら血管の細くなった部分にステント(金属製の網目状の筒)を置きバルーンで膨らませて血管を拡げ血液の流れを良くします。X線透視をしながら造影剤を流すことでリアルタイムに血液の流れを見ながら治療が行えます。また、心臓カテーテル検査は、カテーテルを入れるための小さな傷で済み,局所麻酔なので体への負担が少なく短期間の入院で済みます。
 




徐脈性不整脈や頻脈性不整脈などの疾患に対してリスク評価や発生機序など不整脈の原因精査を目的とし電気生理学的検査を行います。心臓に電極カテーテルを挿入し心臓に電気刺激を与えながら、心臓内の電位を調べて刺激伝導系の機能を測ります。この検査により、治療方針を立てることができ、ペースメーカーや埋込式除細動器のタイプの決定をします。

また、心房・心室細動、心房・心室頻拍などの心臓の拍動リズムに異常をきたす不整脈疾患に対しては心筋焼灼術(アブレーション)を行います。アブレーションとは心臓に電極カテーテルを挿入し、不整脈の原因となる興奮を伝える回路や発信源をカテーテルを用いて高周波で焼き切る事を目的とした治療です。不整脈の種類によっては太いカテーテルを3〜5本挿入する必要があります。検査中は、薬剤や電気刺激により動悸や喉が渇くなどの症状が現れる場合があります。何かあればすぐに周りのスタッフに声をかけて下さい。





単心室症や心房・心室中隔欠損症やファロー四徴症、大血管転位症などの先天性心疾患全般に対し、外科的手術の前後に血行動態や解剖を把握する目的で行います。また、先端にバルーンのついた特殊なカテーテルを用いて心臓内の各部位の圧力や心拍出量の測定も行います。
基本的に、成人期に達した先天性心疾患患者さんも小児科で定期的に造影検査を行い経過観察しています。
 

  川崎病罹患後の冠動脈疾患に対してもカテーテル検査を行い、定期的に経過を観察しています。術前・術後の検査目的だけではなく、術後の肺動脈狭窄症に対する血管形成術や動脈管開存症に対するコイル塞栓術、心房中隔裂開術(BAS)などの治療も行っています。
検査対象が青年未満の患者さんであれば検査中は、完全に寝かせた状態で検査治療を行います。何かあればすぐに処置出来る体制で検査を行っています。



当院の放射線科では様々な治療を行っています。前述した血管造影手技にもとづき血管内にカテーテルを挿入して治療する血管系IVRや、血管を経由せずに直接肝臓や腎臓などの臓器に針を刺して組織を採取したり、溜まった膿を体の外に出す非血管系IVRに大別されます。
・血管系IVR:薬剤を動脈注入する動注療法(TACE等)、狭窄した血管に対する血管形成術(PTA)、破綻した血管に対する血管塞栓術(TACE)など
・非血管系IVR:CT/ US下生検、閉塞性黄疸・膿瘍に行われるドレナージ術、消化管や胆管 の狭窄に対するバルーン拡張術など

もっとも多く行われている治療がTACE(Transcatheter Arterial ChemoEmbolization) です。肝細胞がんを栄養している血管(動脈)までカテーテルを進め、そこから直接抗がん剤を注入し肝細胞がんの増殖を抑制します。また、さらに塞栓物質(血管を塞ぐ働きのある物質)を入れる事で肝細胞がんを栄養する動脈の血流を遮断し、がん細胞を壊死させる治療法です。ただし、動脈血流が多い腫瘍に対して行われる治療法になります。


造影剤について

造影剤とは、画像診断をより分かりやすくするために使用する薬剤全般をさします。
血管造影室では、主に血管用造影剤を使用して検査・治療を行う事が殆どです。造影剤が体に入ると凄く熱い感じがしますが、少し時間を置くとすぐに引いてきますので熱くなること自体は問題ありません。
造影剤の種類
血管造影用:非イオン性・水溶性のヨード造影剤
消化管用:イオン性・水溶性のヨード造影剤
副作用について
造影剤を使用する事で、副作用が出てしまう場合があります。発生頻度は、患者さんの状態や造影剤の種類によって異なります。何かあればすぐに周りのスタッフに声をかけて下さい。また、人によっては検査が終わった後に遅れて症状が出る場合もあります。
血管造影室では、重篤な症状が出現した場合にすぐに適切な処置ができるような体制をとっています。

お願い・注意点

  • 糖尿病の患者さんで「ビグアナイド系経口血糖降下剤」のお薬を服用している方は48時間の服用中止をお願いします。
  • 甲状腺機能亢進症の診断を受けている方、ヨード製剤(海藻類、イソジン)にアレルギーを持っている方は必ず申し出てください。
  • 検査内容によりますが、検査の前日から絶食をお願いする場合があります。担当の医師にご確認ください。
  • 検査中、何かありましたら近くのスタッフに遠慮せずに声をかけてください。
  • 清潔野が必要となる検査では清潔(きれい)な布が体にかかっているので、手足を自由に動かせません。
  • 検査後、カテーテルを挿入した部位(関節)は圧迫止血をしている間は、曲げのばしをしないよう安静にお願いします。動いてしまうと再出血したり、痛みが出て来てしまう可能性があります。•股関節(鼠径部)からカテーテルを入れ検査や治療をした場合は終了後約4時間から6時間、圧迫固定をして絶対安静にしていなくていなくてはいけません。
  • 造影剤を使用するので、積極的に水分は摂る様にお願いします。