現在、厚生労働省から承認された医薬品数は薬1万9千品目あり、これらはすべて薬物療法に欠かすことのできないものばかりです。
しかしながら、製薬企業から供給される市販医薬品は含量や剤型が一定の規格になっているため、患者さんの多様化したニーズに完全には対応できません。また、患者数の少ない病気に対する医薬品や安定性が良くないため製品として適していないものは、コストの面から製薬企業ではほとんど製造されていません。
このような状況においては、病院の薬剤部で患者さんの病状にあわせて剤形を変更したり、医薬品原料を購入して患者さんの治療に適した剤形をに製剤化しています。 病院内で調製されたこのような剤形を「院内製剤」と呼び、その調製は医療現場と製薬企業の溝を埋め合わせている極めて重要な薬剤師の仕事の1つです。この院内製剤により患者さんのQOL(生活の質)は格段に向上します。最近では治療を目的とした製剤のみならず、病気の診断を目的とした製剤も調製しています。
また、もう一つの製剤室の仕事として、入院患者さんの抗がん剤調製があります。無菌的な環境において、安全に適正に調製し、入院病棟にお届けしています。抗がん剤は治療のために重要な薬剤でありますが、一方で、毒性の強い薬剤でもあります。関係者の被曝を防止し、治療効果を損なわない状態で薬剤をお届けするために、薬剤の化学的特性を知る薬剤師が担う重要な仕事になります。
院内製剤名 | 対象疾患 |
---|---|
アロプリノール含そう剤 | 抗がん薬の投与に伴う口内炎の予防 |
人口唾液0.2%PANA | 口内乾燥症 |
ブロー氏液 | 難治性の慢性中耳炎、外耳道湿疹・真菌症 |
デノシン点眼液 | 難治性角膜炎、角膜ブドウ膜炎 |
ボリコナゾール点眼液 | 核膜真菌症、アカントアメーバ角膜炎 |
インドメタシン液(スプレー用) | 放射線治療又は化学療法中の重症口腔粘膜炎による疼痛 |
メチレンブルー注射液 | メトヘモグロビン血症、副甲状腺の染色 |
1%パテントブルー注射液 | センチネルリンパ節生検における染色 |
安息香酸ナトリウム注射液 | 先天性尿素サイクル異常症に伴うアンモニア血症 |
ヒスチジン銅注射剤 | メンケス病(先天性銅吸収障害) |
フェノール注射剤 | 神経ブロック |
3%ヨードアルコール | 無汗症・乏汗症の診断 |