原発性肺がん
肺がんの外科治療は,がん細胞を取り残しなく取り除くことが必要なため,肺葉切除とリンパ節郭清を基本とします.病気の進行の度合いや性質によって治療方針や方法がことなります.われわれの方針には次のような特色があります.
- リンパ節転移陽性症例には、化学療法や放射線治療を併用した集学的治療
- 周囲臓器への浸潤症例には、合併切除や気管支・血管形成術を併用した拡大切除
- 原発性肺癌の約85%を胸腔鏡手術でおこなっており、その完遂率は80%
- 腫瘍径、GGO率およびPET(SUV値)による縮小手術の対象基準の設置
- 術前未診断の腫瘤性病変に対しては、胸腔鏡下生検および術中迅速病理診断
三次元再構築CTにて個々の肺血管や気管支を詳細に分析し,手術前のシミュレーションや手術中のナビゲーションとして応用しています.
(経皮的マーキングは播種や空気塞栓の危険性があるため、第一内科の協力でCTガイド下バーチャル気管支鏡ナビゲーションシステムによる経気管支的マーキングを原則としています。)
転移性肺腫瘍
従来は、悪性腫瘍の肺転移は全身疾患と考えられ化学療法が第一選択とされました。一定の条件を満たす場合には、局所治療である外科的切除が根治術となりうることが知られるようになりました。
複数回の手術の可能性を考慮し、胸腔鏡手術や用手補助胸腔鏡手術(Hand-assisted VATS)により可及的機能温存を原則としています。また、放射線科によるラジオ波焼灼療法との併用により複数個の転移巣にも積極的に治療をおこなっています。
転移性肺腫瘍の切除条件
- 転移巣が結節陰影を呈していること
- 原発巣や他の転移巣が完全に切除(制御)されていること
- 経過観察(3ヶ月)の経過観察後に転移個数が増加しないこと
- 肺切除後の呼吸機能が保たれること(片側・両側、単発・多発は問わない)
北大の胸腔鏡手術 Vidoe-assisted Thoracoscopic Surgery VATS
肺がんに対する胸腔鏡手術件数の推移北海道大学では1996年に,全国でも早い時期から胸腔鏡手術を導入しました.2005年からは二つの小さな傷から手術を行う二窓法を取り入れ現在にいたっています.胸腔鏡による低侵襲手術により,いままで手術適応とはならなかったお年寄りや合併症をもった方々にも手術がで切る可能性が広がります.肺がんなどの悪性疾患や区域切除などの難易度の高い手術にも胸腔鏡手術でおこなっています.また,適応は限られますが小さなお子様に対する胸腔鏡手術の実績も積んでいます.さらに3mmと細いカメラによる手術も開発し,世界一小さな傷をめざしています
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